生活保護と言えば、「生活保護バッシング」
大手オールドメディアやネットメディアの報道は偏見に満ちたものが多いですし、人々の間においても一部のSNSなどでは、それはもう罵詈雑言の嵐です。
そうした「生活保護バッシング」の中でも典型的な偏見があります、
- 「生活保護受給者は朝からビール飲んでパチンコ三昧」
- 「一日中ゴロゴロしてるだけの人とあくせく働いてる人がなぜ同じ生活なの?」
私は生活保護受給者に対するこうした主張は、例えていえば、
- 「黒人は知的に白人よりも劣っている」
- 「黒人は白人よりも劣った遺伝子を持つ」
こうした差別に基づいた偏見と同じものであるといえます。
今回の記事では、この観点から生活保護受給者への偏見について私見を述べたいと思います。
生活保護受給者といっても千差万別
「生活保護受給者は朝からビールを飲んでいる」「生活保護受給者は皆、パチンコにふけっている」は完全に事実と異なる偏見といえます。実際には生活保護受給者にもいろんな人がいます。生活保護に至るまでの経緯や背景も千差万別です。
生活保護受給者に対する上記のような偏見と、黒人に対する偏見は非常に似た性質を持つ偏見の例と言えます。どちらも特定の集団に対するステレオタイプを押し付け、個人をその集団の一部として一括りにして評価する点が共通していますね。
1. 偏見の構造
生活保護受給者の偏見
「生活保護を受けている人は怠惰である」という主張は、生活保護制度を利用している人々の背景や状況を無視し、一部の事例を過度に一般化したものです。
実際には、生活保護を受ける理由は多岐にわたり、高齢や障害、病気、家庭環境の問題など、本人の努力ではどうにもならない事情が多く含まれます。
人種差別的な偏見
「黒人は白人より知能が低い」という主張も、遺伝学的根拠を欠いた偏見であり、科学的に否定されています。これは、社会的・歴史的な不平等や、教育や経済的資源の分配の問題を無視して、人種に基づいて個人の能力を非常に乱暴にひとくくりに評価するものです。
2. 偏見がもたらす害
- 偏見は個人の尊厳を傷つけるだけでなく、社会全体の分断や不平等を助長します。
- 生活保護の受給者に対する偏見は、制度利用へのスティグマ(汚名)を生み、必要な支援を受けるべき人々がそれをためらう要因になります。
- 人種差別的な偏見は、教育や雇用の機会において不平等を引き起こし、社会的な進歩を妨げます。
メディアの責任
日本で生活保護受給者に対する悪辣な偏見が広まってしまったのは、メディアの責任が大きいと私は思っています。とりわけ大手オールドメディア(マスメディア)が生活保護受給者を取り上げるときは、以下のようなステレオタイプの人物が取り上げられることが多いです。
- 趣味といえばギャンブルと飲酒だけ
- 生産的・創造的な活動を何もしていない
- ボロアパートに住んでボロを着ている
- 「怠惰でいい加減な人格だからここまで堕ちたんだな」と視聴者に思わせるような非社会的・反社会的な発言をする(「借金を踏み倒した」、過去に犯罪を犯したことを自慢気に話す、など)
実際にはこのような人物は生活保護受給者の中の一部にすぎないにも関わらず、こうしたステレオタイプな人物ばかりをメディアは取り上げてきた傾向が強い。このような偏向報道が日本における生活保護受給者の社会的イメージを著しく低下させてきたことは否めません。
生活保護受給者への偏見は解消できるのか?
これほどまでに低下してしまった生活保護受給者の社会的イメージを回復したり、極度に激化してしまった生活保護受給者への偏見を解消することは非常に困難であろうと私は考えます。
それでもあえて提言をするなら、生活保護受給者への偏見を解消するためには、生活保護を受けるに至った「個人」の事実や背景を正しく理解し、個人をその人の特性や状況に基づいて評価することが重要かと思います。
生活保護受給者の側としては、ステレオタイプに基づいた発言をぶつけられた際には、感情的に反論するのではなく、冷静に事実を示しつつ対話を試みることが効果的かと思います。生活保護受給者に関する偏見も、人種差別も、どちらも誤った認識に基づくものであり、それを正していくことがより良い社会の構築につながります。
行政が生活保護受給者の社会的イメージ回復を行うことは期待できない
しかし繰り返しになりますが、生活保護受給者への偏見を解消することは非常に困難であると私は考えます。まず、生活保護受給者の社会的イメージが著しく悪いという事実は、行政にとっても以下のようなメリットがあるから、政治が動くことは期待できません。
生活保護受給者の増加を防ぎ一定に保てる
生活保護受給者が「こんなにイメージの悪い生活保護からは一刻も早く抜け出したい」という心理に基づいて行動することで生活保護受給者の増加を防げますね。
分断統治を容易にする
労働者層(主にワーキングプア層)に生活保護受給者をバッシングさせることで社会的弱者の団結を防ぎ分断統治を容易にする。
非人道的/人格無視の行政運営が容易になる
「生活保護受給者は怠惰で社会人としての責任感に欠け、監視が必要な人々である」というイメージが流布されることで以下のように倫理面で非常に問題のある行政運営が容易に行えます。
- 水際作戦
- 生活保護費の引き下げ
- 個人の人格を無視した就労指導
- アポなしでの抜き打ち家庭訪問1
もし生活保護受給者の社会的イメージが回復したり、生活保護受給者が人権や人格の尊重を訴えやすい風潮になれば、行政としてはこのような問題のある行政運営はしずらくなることでしょう。行政がこれらの利点を容易に手放すとは考えにくい。
与党政治家の中にも「生活保護受給者は一定の権利の制限があって仕方がない」というなんとも背筋が凍るような危険な発言をする者がいます。

もう生活保護制度は解体してベーシックインカムにすべき
政府がこのようなメリットを手放してまで、何の得にもならない「生活保護受給者の社会的イメージの回復」などに着手するでしょうか?そんなことはありえないと私は思います。
こうした背景から私は、もう生活保護制度も老齢年金制度も解体縮小して、その分を活用することでベーシックインカムにすべきだと考えているのです。
最後までお読み頂きありがとうございました。
- 社会通念として「大人」が「大人」に会いに行くときは必ずアポを取るものです。なおアポ無し家庭訪問は不正受給を防ぐことを目的として福祉事務所のガイドラインにて正当化されています。 ↩︎