生活保護制度や障害年金制度など、現在の日本の福祉政策は、基本的に「申請主義」です。
この申請主義、いろんな面で「終わって」ます。
今回の記事では、申請主義が持つ問題点について私見を述べたいと思います。
1. 申請主義の仕組み
「申請主義」とは、福祉サービスや支援を受けるために、利用者自身が申請しなければならない制度を指します。この仕組みは、申請がない限り支援が提供されないため、利用者の能動的な行動を前提としています。
2. 申請主義の問題点
情報へのアクセス格差
福祉制度や支援内容についての情報が十分に周知されていない場合、制度を知らない人々は申請の機会を失います。特に、高齢者や低所得層、教育機会が限られている人々はこの影響を受けやすい。
「自己責任論」や「メリトクラシー1」が暴走している現代において、この問題は非常に深刻です。
- 「制度を学ぼうとしない個人の自己責任」
- 「努力して制度を学んだ人だけを助ければよい」
- 「行政機関には手取り足取り制度を教育する義務はない(勉強してから来い)」
ここまでくると「優れた者のみが生き残り子孫を残せばよい」という悪しき優生思想までは「あと一歩です」。
申請能力の格差
上記「情報へのアクセス格差」と重複する部分も多いですが、申請に必要な書類や手続きが複雑である場合、行政手続きに不慣れな人や精神的・身体的な困難を抱える人は、必要な支援を受けることができません。
最も困窮している人々への影響
私は、困難な状況にある人を「分類」「等級付け」する考え方には反対です。ですが説明のためにあえてこのような論の進め方をします。申請主義においては特に支援を必要とする人々(例:路上生活者、言語的な障壁を持つ外国人、認知症患者など)は、申請そのものができない状況に陥りやすい。これにより、本来支援を必要としている人々が福祉制度から排除される結果となります。
3. 申請主義の代替案や改善策
アウトリーチの強化
行政や支援団体が積極的に現場に出向き、潜在的な支援対象者を発見し、申請を支援する取り組みのことです。
しかしこれは、リソースの面で言うまでもなく限界があるし、個人に強制的に支援を受けさせる権限を行政に与えることには慎重になるべきであるといえます。
自動的な支援判定
デジタル技術を活用し、所得や健康状態などのデータを元に自動的に支援を提供する仕組みの導入。
これは技術的には可能なはずです。誰のためになるのかわからないIT化に莫大な予算を投じるよりも、福祉の自動受給システムを実現したほうがよほど人々の幸福に寄与するのではないでしょうか。
制度の簡略化
申請手続きの簡略化や、ワンストップサービスを提供することで、申請のハードルを下げる。
役所の書類はとにかく、わかりにくいものです。「申請するに足る能力を持たない者」を足切りする意図があると疑わざるを得ません。
おわりに
申請主義において「最も支援を必要としている人々が取り残される」という問題は、福祉政策における重要な課題です。申請主義に代わる、より包括的で公平な制度設計が求められています。
最後までお読み頂きありがとうございました。
- 能力主義と訳されることが多い ↩︎