今回の記事では、日本のみならず、多くの国で非常に深刻な問題となっている、少子化と未婚化について取り上げます。全ての人に生存と生活を保証するベーシックインカム(以下、BI)とからめて、BIの導入によってどのように少子化の改善が期待できるのか、そうしたことについて私見を述べてみたいと思います。
はじめに(少子化と未婚化)
まずはじめに、少子化、および少子化と密接な関連のある未婚化について、言葉の定義を明確にしておきたいと思います。
少子化
少子化とは、出生率の低下により、人口が減少する現象のことをいいます。少子化は一般的に、社会全体での子供の数が減り、将来的に労働力人口の減少や社会の高齢化を招く問題となると考えられます。
未婚化
未婚化とは、結婚しない人の増加、または結婚年齢の上昇を指します。未婚化は、結婚を避ける、または遅らせる傾向が強まり、少子化の一因となるとされます。
日本における婚外関係と婚外子の社会的立場とイメージ
では次に、日本における婚外関係と婚外子(結婚していない親から生まれた子ども)の一般的な社会的立場やイメージについてまとめてみます。
日本における婚外の男女関係
日本では伝統的に、結婚していない男女間の恋愛や性交渉は社会的にあまり受け入れられていない傾向があります。特に、結婚前の交際や婚外での関係は、一定の社会的な偏見を伴うことがいまだに少なくありません。
近年では個人主義や価値観の多様化が進み、婚外の男女関係も徐々に受け入れられるようになっているとはいえ、依然として保守的な意見も多く、特に伝統的な家族観が強い地方やシニア世代においては、婚外の男女関係に否定的な見方は健在であるといえるでしょう。
婚外子の社会的イメージ
かつて日本では、婚外子の社会的地位は非常に低かったといえます。「妾(めかけ)の子」などの表現に表されるように、婚外子に対する偏見が強く、婚外子が社会的に不利な立場に置かれることが多かったため、婚外子を持つことは避けられる傾向がありました。
しかし、近年では法的にも婚外子の権利が保障されるようになり、婚外子に対する社会的偏見は徐々に薄れつつあります。それでも、完全に受け入れられているとは言い難く、特に高齢者層などでは依然として婚外子には批判的な意見が残っています。
少子化=未婚化なのか?
このように見ていくと、少なくとも日本においては「少子化とはつまり未婚化のことである」という論はかなり妥当な見解であると思えてきます。結婚しない人が増えることで、当然、子供を持つ家庭の数が減り、結果的に出生率が低下します。特に、日本では結婚しない若者が増え、晩婚化や未婚化が進行しています。
ですがもちろん、少子化と未婚化が完全に一致するわけではありません。以下に、未婚化以外の要因として挙げられることが多い少子化の原因をまとめます。
未婚化以外に考えられる少子化の原因
晩婚化
結婚する年齢が高くなることで、特に女性の側では出産可能な年齢が狭まり、結果として子供を産む機会が減ります。これも少子化を助長している要因の一つといわれます。
結婚しても子供を持たない選択
未婚化ではなく、結婚後に子供を持たない選択をするカップルも増えています。仕事や生活の不安、育児の負担などが影響している場合があります。個人主義の拡大と、それに伴う価値観の多様化といえます。
経済的な要因
子育てにかかる経済的負担が大きいことも少子化の一因です。経済的な不安から、結婚を避けたり、子供を持つことを先延ばしにしたりする傾向があります。
親になることへの心理的なハードルが高い
現代の日本は、「親になることのハードルが極めて高い」といえます。かつては「子どもは産めば何とかなる」という考え方も一定の支持を得ていましたが、社会の変化とともに、社会が親に求める役割や責任が増大し、その重圧はかつてないほど大きくなっているのです。
児童虐待への監視が強化
まず、児童虐待への監視が強化されたことが挙げられます。子どもへの暴力やネグレクト(育児放棄)が発覚すれば、即座に児童相談所へ通報され、場合によっては子どもと引き離されることもあります。この仕組みは子どもの命を守るために重要である一方、社会による厳格な監視のもとで「親としての失敗が許されない」雰囲気を作り出し、親が育児に対して過度な不安を抱く要因となっている側面があります。
「毒親」という概念の広まり
さらに、「毒親」という概念の広まりも、親に対する社会的なプレッシャーを強めています。これはもちろんメリットも大きく、「毒親」という言葉が広まったことで、子どもが親からの理不尽な支配や虐待を自覚しやすくなり、そこから救われる命も確実に増えているといえます。
しかしその一方で、「少しでも子どもに不快な思いをさせたら毒親とみなされるのではないか」という不安が、特に若い親世代に広がっているのです。結果として、子育てに対する心理的ハードルがさらに上がっているのが現状といえます。
なお、毒親については以下の記事も参照ください。
経済的なハードルの高さ
「子どもを大学まで進学させる経済力がないのに親になるのは無責任」という社会的風潮も、親になることをためらわせる大きな要因となっているでしょう。戦後の日本では「貧しくとも家族で助け合って生きる」という価値観が根付いていました。
しかし学歴社会が進行し、大学進学率が50%を超え、大学進学が事実上の前提とされる中で、「十分な教育資金を準備できないなら子どもを産むべきではない」という考え方が広がっています。このため、経済的に余裕がない層は、結婚や出産を諦めるケースが増えています。
育児の孤立化と負担の増大
これらに加えて、育児の孤立化と負担の増大も見逃せない要因といえます。核家族化が進み、地域や親族とのつながりが希薄になったことで、育児は親だけで背負わなければならないものになりました。
これらの要因が重なり合い、日本では「親になる」ことが一層困難な時代となっています。
本題:少子化と未婚化
さて本題です。ここからは、少子化の原因の一つである未婚化に絞って私見を述べたいと思います。
私は、人間の本能として、男女は以下のような本能的傾向を持っていると考えます。
・たくさんの女とSEXしたい男
・最高の男を選り好みしたい女
従来の社会においては、法律などのルールによって、あるいは共同体における「掟(おきて)」を用いて、これら人間の本能を抑制することで未婚化を防いできた側面があります。ですが近年、個人主義の拡大により、この抑制が効かなくなっていることに、少子化の原因があると思っています。
個人主義の拡大と人間の本能
例を上げましょう。
例えば、かつての日本社会では「家制度」が強く機能していました。結婚は個人の恋愛感情よりも家同士の結びつきとして捉えられ、親や親族が主導、時には強制するかたちで結婚が行われてきました。その一つの例として「お見合い結婚」がありました。
このような、個人の意志よりも集団の利益を重視する社会によって、「最高の男を選びたい」という女性の本能的傾向はある程度制限され、「たくさんの女性と関係を持ちたい」という男性の欲求も抑えられていたのです。
また、地域社会や職場における圧力も重要な役割を果たしていました。「いい歳になれば結婚するのが当たり前」という価値観が強く、未婚の男女には親戚や近所の人々から結婚を勧められることが普通でした。こうした社会的プレッシャーが、男女の本能的傾向をある程度抑え、未婚化を防ぐ要因となっていた側面があります。
一方、現代では自由恋愛が一般化し、「結婚は個人の自由意志」という考え方が広まりました。婚活市場やマッチングアプリでは女性の「より優れた男性を選びたい」という選別意識がより顕著になり、一部のハイスペックな男性に女性の希望が集中する現象が見られます。
このように、従来の社会ではルールや共同体の掟によって抑制されていた男女の本能が、個人主義の拡大と社会の変化によって解放され、未婚化や少子化を加速させる一つの要因となっていると考えられます。
個人の自由と権利よりも集団の利益が優先される社会は間違っている
では、社会が個人に「とにかく結婚しろ」と強要していた、かつての時代に戻るのがいいのか?
それは間違っていると私は考えます。
なぜなら、
「お前の意思など問題ではない。とにかく社会(集団)が決めた相手と結婚しろ」
こうした圧力が、まかり通る社会は、
「お前の意思など問題ではない。とにかく労働しろ」
も、まかり通る社会だからです。
個人の自由を無視した社会は、労働の選択権すら奪うような全体主義に繋がりかねないのです。
ですので、単純に、前の時代に戻ることで少子化を改善しようというアプローチには、私は反対の立場をとります。
ベーシックインカムと未婚化
私は、私たちが抱える数多くの問題に対する処方箋として、全ての人に生存と生活を保証するベーシックインカム(BI)の導入を推しています。ですので、未婚化についても私はBIをその解決策の一つとして推したいのです。
もちろん未婚化の問題への対策はBIだけでは十分ではありません。ですが、現代日本において「優れた男性」の条件に経済力のウエイトが占める割合が高すぎるという状況に対しては、「BIによる生き方の多様化」による改善が見込めるのではないでしょうか。
いっぽう、男性の側については、結婚制度という契約システムを今後も私たちが維持するならば、男性の本能は引き続き、ルールにより抑制される必要があるでしょう。
ですが、BIは、確実に男性の育児・家事参加を高めるはずです。日本の近代化に伴って歪められた家庭像「男が働き、女は家庭を守る」から、人間が本当に幸福を感じられる家庭像への追求・回帰が実現することも期待できると思います。
おわりに
今回は、世界的な問題ともいえる少子化と未婚化について、ベーシックインカムとからめて私見を述べました。
最後までお読みいただきありがとうございました。