生活保護受給者はなぜ団結できないのか

生活保護費の引き下げがまた政府内で議論されているそうです。

  • 「いつもいつも、一方的に引き下げられていると感じる」
  • 「どうして生活保護費の引き下げに文句を言う人がいないのかな」

と思っている人も少なくないかと思います。

私の考えを結論から言うと、これらの憤りや疑問に対する答えは

「生活保護受給者が団結できないから」

です。

この記事では「なぜ生活保護受給者は団結できないのか」というテーマで私見を述べたいと思います。

1.経済合理性

まず紹介したいのは、こちらのYouTubeチャンネル「ベーシックインカムちゃんねる」さんです。

以下の動画では、なぜ日本人の多くが絶望的なまでに苦しい境遇に置かれているのにデモや革命を起こそうとしないのか、について「経済合理性」の観点から説明されています。

つまりは、仮に「苦しい者同士」がいっとき団結したとしても、必ず「抜け駆け」をする者が出てきてデモや革命は頓挫する、ということです。

こちらの「ベーシックインカムチャンネル」さんですが、この動画以外にも、

  • 「なぜ女性VTuberが人気なのか」
  • 「なぜビジネスが悪質になるのか」

といった幅広い提言をされています。私はずっとフォローしているチャンネルです。

さて、今回の記事である「なぜ生活保護受給者は団結できないのか」についてですが、

これもやはり「経済合理性」による面が大きいかと思います。

  • 生活保護受給者として戦い続けるよりも就職した方が楽だし手っ取り早い
  • 政府に働きかけて生活保護費の1万円増額を実現するよりもバイトで1万円稼いだほうが早い

ということです。

仮に、「生活保護受給者の皆さん!団結して保護費引き下げに抗議しましょう!

などとSNSなどで呼びかけたとして、いっときは人数が集まったとしても、上記のような経済合理性から「イチ抜けた」する人が次々と出てきて、権利を勝ち取るための政治運動の体を維持することは難しいでしょう。

仮にその運動が拡大して、生活保護費を大幅に引き上げざるを得ないような状況が実現したとします。統治権力からすれば、その運動を潰すことは簡単です。それは、その運動の指導者・ないしはキーマンを買収することです。

  • 経営者であれば、有利な条件で仕事を回すことを約束する(中抜きの輪に加われる等)
  • 表現者であれば表現の場を与え、安定した収入も約束する(御用表現者)
  • 学者には自己愛が存分に満たされるポストを与える(御用学者)

誰がこのような申し出に抗しきれるでしょうか?

抑圧・弾圧も経済合理性で可能、買収・懐柔も経済合理性によって可能なわけです。つくづく資本主義とはバケモンだなぁと痛感します。まさに「悪魔の挽臼」ですね。

2.「生活保護は一時的なもの」という風潮

次に、これは巧妙にデザインされているなあと思うのですが、それは

生活保護って、あくまでも一時的に困った人を救うためのものだよ?

という、「生活保護とはあくまでも一時的(テンポラリ)なものである」という風潮が浸透していることです。

このことは、SNSで、

  • 「闘病界隈」
  • 「障害者界隈」
  • 「生活保護界隈」

といったジャンルのアカウントの多くがどのような発信をしているか、見てみれば一目瞭然です。

  • 「生活保護に頼るのは今だけ。早く自立せねば」
  • 「早く病気を治して生活保護から抜けたい」
  • 「皆様の税金に助けられて生き延びることができました。努力を惜しまず可及的速やかに自立に向けた一歩を踏み出したい」

などなど。私はこうした発信をする人の気持ちも理解できますし、こうした発信が悪いことだと言うつもりは毛頭ありません。

しかし統治権力としては「生活保護は一時的なもの」という社会通念が流布されることで受給者の総数を一定に保つことができるし、受給者の入れ替わりが激しくなるため団結も困難になります。統治権力からすれば好都合この上ないわけです。

「生活保護は一時的なものである」という認識は正しくありません。日本の法律には生活保護は一時的なものであると明言されている箇所はありません。恒久的に保護が必要な人が恒久的な保護を受けられてしかるべきものです。

3.生活保護受給者の社会的イメージは極めて悪い

生活保護受給者が団結できない原因の最たるものとしてあげられるのは、生活保護受給者の社会的イメージの悪さにあります。

一部の政治家による生活保護バッシング

現在の日本では、生活保護受給者の社会的イメージは極めて悪いもの・不名誉なものになっていることは否めません。この背景には一部の政治家による、いわゆる「生活保護バッシング」の影響が大きいと私は考えています。

自民党議員による主な生活保護敵視の発言 世耕弘成 片山さつき 石原伸晃 生活保護バッシング

残念ながら、今の日本は国政を担う政治家がこのような発言をする壊れた社会となっています。

このような状況の中、生活保護受給者が団結し、身元を明らかにして運動に参加することは、非常にリスクが大きいといえます。

それはたとえば、ユダヤ人を迫害しているナチスドイツ政権下のドイツで「私はユダヤ人だ。政府はユダヤ人への迫害をやめるべきだ」などと主張したとして、その後は何が起きるでしょうか?ということです。

半ば意図的に作り上げられてきた生活保護受給者のネガティブなイメージが、生活保護受給者が団結することを阻害しているのです。

最後までお読み頂きありがとうございました。

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