現代の日本において、労働は生きるための必要不可欠な活動とされており、また多くの人々にとって労働は自己実現や社会貢献の手段であると考えられています。
しかし、この労働が私たちの健康にどれほどの影響を及ぼすかを考えることは、あまりにも少ない、というかほとんどタブー視されているのが現実です。
労働そのものが引き起こすストレスが、実は多くの病気の原因となり、さらにそのストレスを紛らわすために嗜好品に依存することで、状況はますます悪化していくのです。
今回の記事では、「労働は万病のもとである」という視点をもとに、現代の労働環境と健康の関係について私見を述べたいと思います。
労働が引き起こす健康リスク
過度な労働は、単なる肉体的疲労だけでなく、精神的な負担をもたらします。長時間働き続けることが習慣になったり、職場でのプレッシャーが続いたりすることで、心身に過度なストレスがかかります。
特に精神的なストレスが持続的にひきおこす悪影響は深刻なもので、特に知的労働者においては「仕事以外のプライベートな時間も仕事のことで悩んでいる」という状況が起こりがちです。
こうしたストレスが蓄積されることで、高血圧や糖尿病、さらにはガンを引き起こすリスクが高まることは、数多くの医学的研究でも証明されています。
特に、長時間のデスクワークや過労が続くと、慢性的な肩こりや腰痛、頭痛といった体調不良が現れることが一般的です。こうした体調不良が、心身に大きな負担を与え、仕事の効率を下げる悪循環に陥ることも少なくありません。
嗜好品の消費が悪化させる健康問題(酒、タバコ)

労働によるストレスを解消するために、多くの人々が嗜好品に依存しています。たとえば、アルコールやタバコは、ストレスを一時的に和らげる手段として多くの人に利用されています。しかし、これらの嗜好品がもたらすのは一時的な安堵感に過ぎません。
アルコールやタバコの摂取は、長期的には肝臓や肺へのダメージを引き起こし、がんや心疾患などの重大な病気のリスクを飛躍的に高めます。
また、労働が大半を占めるような生活においては、仕事に追われるあまり食事が不規則になり、栄養が偏った食生活を送りがちです。これも健康を損なう要因の一つです。労働のストレスと嗜好品や不規則な食生活が相まって、健康に対する負担は計り知れません。
なぜ医師は「労働は万病のもと」と声を上げないのか?
この「労働と健康」の問題について、人の生命と健康を守るうえで最高レベルの職業倫理が社会から求められている医師の中から「労働は万病のもとである」と声を上げる人が皆無に等しいのはなぜでしょうか?
その理由は、医師もまた労働そのものが社会の基盤とされている現実に直面しているからです。労働が社会の価値基準において最重要視されている以上、医師が、労働がもたらす健康被害を直言することには大きなリスクが伴います。社会全体の働き方や価値観に対する広範囲かつ深刻な批判が必要となり、これは場合によっては医師自身の職業的な立場にも影響を与える可能性があるでしょう。
また、医療業界自体が資本主義社会を基盤とした市場経済システムに組み込まれており、病気を治療すること自体が産業となっています。そのため、病気の根本原因に触れるよりも、治療に焦点を当てる方が無難だという風潮すらあります。

このような背景が、「労働は万病のもとである」といった声を上げることを困難にしているのです。
おわりに:健康を守るための新しい視点
多くの人にとって現代社会における労働は、私たちの生活に欠かせないものとなっています。ですがその健康への影響を軽視してはいけません。過労やストレスが慢性化する前に、健康的な生き方を選び、必要に応じて休息を取ることが重要です。また、ストレスを解消するために嗜好品に頼るのではなく、運動やリラックス法を取り入れるなど、より健康的な方法を模索することが求められます。
私たち一人ひとりが、「労働は万病のもとである」という目を背けがちな現実を直視し、健康を守るための行動を選択することで、少しでも心身の負担を軽減することができるでしょう。
最後までお読み頂きありがとうございました。