最上あいさん刺殺事件と「今だけ、カネだけ、自分だけ」行き過ぎた新自由主義がもたらす社会の危険性

ライバー最上あいさんが知人男性によって刺殺された事件は、単なる個人的な悲劇ではなく、現代社会が抱える深刻な問題の表れです。この事件の背景には、「今だけ、カネだけ、自分だけ」の行動様式を奨励し続けてきた新自由主義的な価値観が根深く影響していると考えられます。

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東京都新宿区高田馬場の路上で3月11日、動画配信者「最上あい」こと佐藤愛里さん(22)=多摩市=がライブ配信中に刺殺された事件で、警視庁が殺人未遂で現行犯逮捕した高野健一容疑者(42)=栃木県小山市

今回の記事では、新自由主義がもたらす社会の歪みと、その危険性について考察します。

新自由主義が生み出す「自己責任」の圧力

新自由主義のもとでは、個人の成功や失敗はすべて自己責任とされ、社会的な支援や成功要因における社会の枠組みの重要性が軽視されがちです。ライバーという職業は、個人の魅力や努力によって収入を得る仕組みですが、これは「すべてが自己責任であり、成功するかどうかは本人次第」という幻想の上に成り立っています。

ライバーという職業における活動は決して個人の努力だけで成立するものではありません。視聴者との関係やプラットフォームのアルゴリズム、さらには社会全体の経済状況にも左右されます。それにもかかわらず、新自由主義的な価値観が蔓延する社会では、「稼げないのは自己責任」「トラブルも自己責任」として、ライバー自身の安全や福祉が軽視される傾向があります。

この背景には、日本が極めて治安のよいこと、加えて、実質的な意味はほとんどないことに多くの人は気付いているが、今なお多くの国民の意識を支配している偏差値教育と、偏差値教育が果たしている社会的身分の決定機能が深く関係しています。

社会の「分断」と「孤立」が生む暴発

新自由主義は競争を促進し、結果として格差を拡大させます。格差が広がると、社会的な分断が進み、人々は孤立しやすくなります。ライバーという職業も、その孤立の象徴の一つです。ファンとの関係はオンライン上に限定されることが多く、リアルな共同体の支えが弱い傾向にあります。

事件を起こした犯人も、おそらく社会的に孤立し、ライバーとの関係に過剰に依存していた可能性が高いでしょう。新自由主義的な競争社会では、「負け組」や「底辺」とされた人々が社会から排除され、救いを求める場を失うことで、今回のような暴力的な事件につながる危険性があります。

「今だけ、カネだけ、自分だけ」社会の行き着く先

新自由主義は、「競争こそが社会を成長させる」という建前のもと、人間関係までも市場原理に組み込んでしまいました。その結果、人間の価値は「どれだけ稼げるか」「どれだけ注目を集められるか」に還元されるようになりました。人間性の消失と、人間の商品化です。

このような社会では、人々は消費者か生産者のどちらかとしてしか見なされず、本来の人間的なつながりが損なわれます。ライバーと視聴者の関係も、経済的な搾取と依存の関係になりやすく、今回の事件のように関係が破綻したときに暴力へと発展するリスクが高まるのです。

必要なのは「つながり」と「共助」

新自由主義の行き着く先は、人々が自己責任を押し付けられ、孤立し、関係が断絶する社会です。最上あいさんの事件は、その危険性を如実に示しています。

このような事件を防ぐためには、「競争」ではなく「共助」を基盤とした社会への転換が必要です。ライバーという職業も、単に市場で生き残れるかどうかではなく、安全に活動できる環境を社会全体で整えるべきです。また、ファンの側も金銭的な支援だけでなく、人と人との健全な関係を築く意識を持つことが重要です。

そのためには、すべての人が最低限の生活を保障され、孤立せずに済む社会の仕組みが求められます。その第一歩として、「ベーシックインカム」のような制度が必要ではないでしょうか。

おわりに

結論として、最上あいさんの事件は、新自由主義が生み出した「孤立と分断」の結果として捉えることができます。

今だけ、カネだけ、自分だけ」の価値観が支配する社会では、同様の事件が繰り返される危険性があります。これを防ぐためには、競争原理ではなく、人々のつながりと共助を基盤とした社会への転換が必要です。そのためには、経済的な孤立を防ぐ仕組み、すなわちベーシックインカムの実現が求められています。

私たちが目指すべき社会は、人々が孤立せず、互いに支え合える社会です。新自由主義の限界を見直し、すべての人が安心して生きられる社会だと考えます。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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