- 「失敗してもやり直せる社会」
- 「誰もがチャンスを掴める社会」
- 「再チャレンジ可能な社会」
やり直しができる社会、についてこれまで様々なスローガンが掲げられてきました。
- 何度失敗してもやり直せる社会
- 人生の中盤以降でもキャリアチェンジができる社会
一見、よさげに見えますよね?
私も、こういう社会が実現したらいいと思っています。
しかし私は、日本人の多くが実は「再チャレンジできる社会」を本音では望んでいないのだと思っています。今回の記事は、日本人が抱える「不安」の問題とからめて「再チャレンジを望まない」人々が多い理由について私見を述べます。
不安を感じやすい遺伝子をもつ日本人
「日本人は世界の民族の中でもとりわけ不安を感じやすい遺伝子の持ち主が多い」という主張は、特定の遺伝子の分布に関する研究を基にしています。私は科学の専門家ではありませんが、この点について科学的に解説してみたいと思います。
1.セロトニンと不安感
セロトニンは、脳内で感情を安定させたり、不安やストレスに対処するのを助ける神経伝達物質です。このセロトニンの働きに影響を与える遺伝子の一つが「セロトニントランスポーター遺伝子(SLC6A4)」です。この遺伝子には2つの主要なタイプがあるとされます
- 短い型(S型)
- 長い型(L型)
S型はセロトニンの再取り込み効率が低く、ストレスや不安を感じやすい傾向があるとされています。いっぽう、L型はその逆で、ストレスへの耐性が比較的高いとされています。
2.日本人に多いS型の割合
研究によると、S型を持つ割合は人種や民族によって異なります。以下は、いくつかの地域でのS型保有率の例です。
日本人:約70%以上がS型を保有
ヨーロッパ系:約30〜40%がS型を保有
アフリカ系:約20〜30%がS型を保有
このように、日本人にはS型を持つ人が多く、ストレスや不安を感じやすい遺伝的傾向があると考えられています。
「身分」「階級」が固定された社会のほうが「不安がない」
さて、今回の記事の主題である「やり直しができる社会」に話を戻します。
いうまでもないですが、あらゆるポジション(立場、身分)において、それにつける「座席」の数は有限です。
たとえば、誰もが入社したいと思うこんな企業、
- 歴史が長く
- 給料もよく
- 社会的イメージもよい
- 残業もほぼない
- 企業ヒエラルキーの頂点に君臨する
- 福利厚生も充実している
- 大手ホワイト企業
こうした企業には就職希望社が殺到し、企業はよりどりみどりの買い手市場。ごく一握りの人のみがそのポジションにありつくことができます。
ポジションが有限だとすると、「やり直しができる社会」においては、一度手にした上記のような素晴らしいポジションも、失うリスクがあるということです。
これが、多くの日本人には耐え難い不安として受け止められる、と私は考えるのです。
18歳で人生のすべてが決まる社会
たとえば、批判的な意見も少なくないながらも未だに存続している
「新卒一括採用」
日本人の多くが「18歳でどの大学に合格したか」によって、一生が決まってしまうという、一見残酷な社会を、実は望んでいると私は思うのです。
身分が固定化した社会では福祉の意義も育たない
「18歳でどの大学に入学したか」で身分が固定されてしまう社会というのは、さらにさかのぼって考えれば、「どんな親のもとに生まれたか」によって身分が決まる社会だともいえます。なぜなら、現代の日本において18歳以前に起業などをして自己にかかる教育費をすべて独力で稼げる個人などごく僅かなケースといってよいだろうからです。
ということは、裕福な親のもとに生まれて、十分な教育投資を受けられた個人が、大学の格付けの中で上位とされる大学に入学しやすくなるのは必然のことです。
実際に、東京大学の学生の親の年収で最も多い層は年収一千万円超で、全体の4割にのぼるという調査結果もあります。
身分の変動がない社会においては、一度手にしたポジションに一生、収まっていられる。しかし、高い社会的イメージを持ち、誰もが羨むようなポジションであろうと、あるいはそうでなかろうと、どのようなポジションであれ人は、現在のポジションに不満をいだいてしまうものです。
そうすると、必然的に自分よりも低い階層の者に対するバッシング行動が起こります。一度、素晴らしいポジションを手にさえすれば、そのポジションを失う不安とは無縁であり、そうした人々は「明日は我が身」という危機感を持たないからです。
このような社会では、社会福祉が持つ本当の意義が浸透しないのもうなずけます。一生失うことがない安全なポジションについた人が、自分の払った税金が福祉に使われることの本当の意義を見いだせるでしょうか?
失敗者に課される重すぎるペナルティ
アメリカをはじめとした欧米諸国では、事業に失敗して破産した経験は日本ほどには深刻に受け止められません。「失敗をバネに再起して次は成功すればよい」というポジティブに捉える風潮すらあります。
いっぽう日本では、破産した個人にはとてつもなく重いペナルティが課されます。官報にフルネームが掲載されて晒し者にされ、金融ブラックリストにも載る。それは実業家として再起することをほとんど不可能にしてしまうほど、重いものです。
もちろん、破産した個人の周囲には、それによって多大な迷惑を被った債権者が存在することは加味して考えなければいけないことです。
しかし、こうした社会システムにも、不安を強く感じる日本人の特性が現れていると思うのです。「和を乱した者」「皆を不安にさせた者」に厳罰を与える。「不安」や「恐れ」からそうするのです。
提言
日本において「再チャレンジできる社会」を実現するためには、日本人が遺伝子的に抱えている強力な不安の問題を解消することが不可欠といえます。つまりは失敗に対する支援が必要ということです。
社会が失敗を受け入れるためには、精神的なサポートやキャリアの柔軟性が重要です。具体的には、心理士などメンタルヘルス支援のリソースを強化し、転職やキャリア変更を支援するためのプログラムを充実させることが求められます。
さらに、ベーシックインカムを導入することで、経済的な不安を軽減し、再挑戦の自由を保障する社会を作ることができます。
最後までお読み頂きありがとうございました。