今回の記事は、経営者の方への提言となります。
内容は、全ての人に生活を保証する「ベーシックインカム(以下、BI)」の導入について、そして日本で長らく議論され続けている「解雇規制」の問題を見直しませんか、というものです。
ベーシックインカム(BI)の導入と解雇規制の見直しは、セットで考えるべきだと私は考えます。
なお、解雇規制については以下の記事もご一読ください。
ビジネスは社会福祉ではない
「業務遂行に必要な能力を満たしていない従業員を自由に解雇できれば……」
経営者なら、一度はこう考えたことがあるのではないでしょうか?
ビジネスの本質は、社会課題の解決と利益の最大化にあります。しかし日本では強固な解雇規制があります。ビジネスには浮き沈みがつきものですが、この解雇規制があるがゆえに、それに合わせて雇用を調整することは日本では非常に困難になっています。
大半の労働者の生活は、みなさんが経営する企業が支払う給与に依存しています。ですので、みなさんのビジネスが不調だからといって解雇したとしても、以下のような非難を受けることがあるのが現実です。
- 「明日からの生活はどうしたらいいんだ!」
- 「人でなし!私の家族を路頭に迷わせろというのか!」
繰り返しになりますが、ビジネスの本質は社会課題の解決と利益の最大化にあります。ビジネスの目的は決して社会福祉ではありません。 しかし現代日本の社会は、皆さんのような経営者に「雇用を守る」という社会福祉的な役割を押し付けているといえるのです。
民の生活を守ること、すなわち社会福祉は、企業ではなくBIが担うべきなのです。
現在の日本では、「働いた見返りとして支払われる報酬」の体裁のみを整えるために、多額の公金が投入され、社会課題の解決という使命をとっくに終えて引退すべき業界を無理矢理に生きながらえさせているのが実情です。
わざわざ「働いた見返り」としてお金を渡す体裁を整えることに実質的な価値は皆無です。政府が直接お金を国民に配ればよい。つまり賃労働に固執する必要は全くないのです。
話が少々脱線しますが、この点が私の考えとマルクス主義が相容れない点でもあります。
BIは雇用の調整を容易にする
BIが導入され、すべての人に最低限の生活が保証される社会では、「解雇されたら明日から生活できない」といった切実な不安がなくなります。
その結果、経営者に対する「解雇=非人道的」という批判が和らぎ、企業はより柔軟に雇用を調整できるようになります。この社会ではもはや企業家は篤志家・福祉の提供者であることを強要されることはありません。
また、BIの導入により人材の採用プロセスの簡素化も期待できます。
現在、多くの企業は「一度雇ったら簡単に解雇できない」状況があるため、慎重な採用プロセスを強いられており、そこには多大なコストが必要とされます。
しかし、BIのある社会では「試しに雇ってみる」という選択肢が増え、企業と労働者のミスマッチが減少するでしょう。
さらに、仕事へのモチベーションが皆無にも関わらず、ただ金を、安定した暮らしを得るためだけに一度手にしたポジションにしがみつくだけの従業員が多数存在する、という問題も改善されるはずです。
BIは雇用者、被雇用者の双方にメリットがある
同時に、労働者側も「条件の悪い仕事を無理に受け入れる必要がない」という自由を手に入れます。
労働者に
「そんなクソな仕事はお断りだ」
と拒絶する権利があるのと同様、経営者の側も、
「うちの業務が行えるだけの能力がない奴はお断りだ」
と拒絶する権利があるのです。
BIの導入により、雇用者と被雇用者は本当の意味で対等な関係になります。
罰ゲーム業界(不人気・底辺業界)を必要とする社会は間違っている
「能力が低い人のためには、どんな仕事であれ提供するべきではないか?」という意見もあるかもしれません。しかしこれは、すでに述べたような、ビジネスに社会福祉を不当に押し付けている社会を前提とするからそのような発想が必要になるのです。
私は、「能力が低い人にやらせればいい」という、罰ゲームのごとき発想で成り立つ業界を必要とする社会は、間違っていると考えます。
社会は常に変化します。今は活躍できる場がない人でも、未来においても適した役割が創造されないとは誰にも言えません。
そのような人たちは、BIを活用して生きながらえ、力を蓄えながら適した機会を待てばよいのです。
繰り返しますが、「能力の低い人に無理やり働かせる」ことを前提とした社会は、根本的に間違っています。たとえば警備、介護、建設、そのような重要な職種に「本当は働きたくないが他に仕事がないため仕方なく働いている」モチベーションの極めて低い労働者が増えることで発生する不幸の大きさは計り知れないものがあります。
おわりに
BIの導入によって、経営者と労働者の双方にとってより公平で柔軟な労働環境を実現できるのです。それは、雇用者と被雇用者が真に平等であり、それを基盤とした信頼関係で結ばれた労働環境を実現するものです。
最期までお読み頂きありがとうございました。